暑い夏にだけなるというイメージの熱中症ですが、それほど気温が高くなくても熱中症にかかる危険があることをご存知ですか?
また、熱中症には意外と知られていませんが危険なサインがあり、それが手足のしびれで、症状が悪化すると命の危険もあります。
今回は熱中症で体や手足がしびれてしまった時の正しい応急処置の方法と予防法についてわかりやすく解説していきますので、最後までご覧くださいね。
目次
熱中症症状のしびれに注意!
熱中症で体がしびれる理由は、ナトリウムやマグネシウムなどの電解質(でんかいしつ)不足により体内への水分の吸収や筋肉の収縮が上手くいかないためです。
早急に処置をしないと症状が悪化して頭痛や吐き気を引き起こし、自力で水分を補給することができなくなってしまいます。
汗をかくと水分と一緒にミネラル(ナトリウム、マグネシウムなど)も体外に出てしまい、ミネラルの中でもナトリウムやマグネシウムなどの塩に含まれる成分(電解質)には体内で水分を吸収しやすいように調整したり、筋肉の動きを正常に保つなど様々な働きをしているため、ミネラル不足によってまず体に起こる症状がしびれです。
ミネラル類とは、人間にとって必要不可欠な五大栄養素のひとつで、体の組織をつくる原料となり、体の働きを維持・調節する働きを持つ微量栄養素です。
人間の体の約96%は、炭素、水素、酸素、窒素で構成される炭水化物 (糖質)やたんぱく質、脂質、ビタミン類などの有機物と水分からできています。残りの約4%を構成しているのがミネラル類 (無機質)です。
引用元/わかさの秘密
もともと、体に占めるミネラルの割合はわずかですが、人間は体内でミネラルを合成することができないので、食事などで補うしかありません。
体や手足のしびれは、熱中症の重症度を表すⅠ~Ⅲ度のうちの、比較的軽い症状に分類されるⅠ度ですが、この症状を見逃してしまうとⅡ度に進行し、頭痛や吐き気、軽度の意識障害が現れるため、この段階で水分とミネラルを補給することが大切となります。
熱中症の予防には、水分とともに塩分を摂れというのはこういう理由からきているんですよ!
熱中症のしびれの原因
汗をかくことで体内から水分と一緒にミネラルが放出されると、血液の中の塩分(塩化ナトリウム)の濃度が低くなり、更には水分の吸収などが上手くできなくなって、体や手足のしびれがおこります。
熱中症で体がしびれている時には、血液の中の栄養や酸素が不足していることを各組織が脳に伝え、脳に伝わるとしびれを感じるという人体の正常な反応で、熱中症の比較的初期の段階で起こる症状です。
この時に適度な対処をするかが熱中症対策として非常に重要なポイントとなります。
汗をかいた際に、水だけを飲むと血液の中の塩分がさらに薄くなるため、熱中症の予防とはならず、そのまま放置すると症状が悪化していくので、塩分の入った飲み物(ナトリウムやマグネシウムが入ったスポーツドリンクなど)で水分補給するということが大切です。
※カフェインが入っているお茶やコーヒーには利尿作用(水分を尿として出す働き)があるため、ハードなスポーツをする時や、脱水状態にある時に飲むドリンクには向きません。
人間の体に欠かせないミネラル
体に必要なミネラルは16種類もあります。
毎日の食事で手軽に取れるものから意識しないと不足しがちになるものもあるため、熱中症予防には普段からのバランスのよい食生活が大切です。
栄養素として欠かせないことがわかっているミネラルとして、現在16種類(ナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素)が知られています。
引用元/農林水産省
比較的取りやすいものとしては、食塩に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムですが、食塩のとり過ぎは肝臓に負担となり、肝炎や肝臓ガンなどの病気を引き起こすので、摂る際のバランスが大切です。(カルシウムは骨の形成に多く使われるため、食塩だけでは不足してしまいます)
逆に不足しがちな物質としては鉄分で、卵の黄身や、豚肉、のり、赤みの魚介類やレバーなどに多く含まれますが、鉄は血液の中のヘモグロビン(赤血球の一部)となり、酸素を取り込んで全身の各臓器に運ぶ働きをしているため、消費量が多く、ハードな運動や疲労が重なると足りなくなってしまいがちです。
また、鉄単体で摂取しても体内で十分に働くことができないため、ビタミンB 、マグネシウム、タンパク質もとる必要があります。※栄養素は単体ではなく、お互いが助け合って(チームのように)働くものが多く、これを相互作用と呼ぶので覚えておきましょう。
気温が高くなくても要注意
熱中症は気温がそれほど高くなくても、ハードな運動を続けることで体内の温度が上がり、発汗により水分とミネラルが出ていくので、電解質不足により体内で水分の吸収ができなくなり発症することがあります。
※電解質(塩に含まれるナトリウムやマグネシウム、カリウムなどの物質)が、水分が体に吸収される浸透圧といい体液(血液や細胞内液など栄養素の運搬や細胞の活動の維持を行っている液体)に水分が吸収されやすくなるよる調節をすることにより、素早く体内に水分が吸収されるのです。
夏場はもちろん、それほど暑くない季節でも暖房の効いた屋内での運動や、長時間のハードなスポーツで熱中症になり、体のしびれなどの症状が出た時には、無理をせず涼しい場所に移動し、水分と塩分を十分に摂ることを心がけて下さい。
特に、外が寒いと厚着をするので、服による締め付けが血液の流れを悪くし、体温が下がるのを邪魔してしまいますから、熱中症になる危険があります。
また、気温が寒いと運動をしている時と止まっている時の体の温度の差が激しく、血液を送る際に心臓に負担がかかるので、無理をしないようにしましょう。
熱中症の原因
体温が上昇し下がらないことで、体内に熱がこもって臓器が正常に動かなくなることや、ミネラルや電解質(でんかいしつ;体内の水分吸収や筋肉を動かす、神経伝達などの働きがある成分)不足により酸素を各臓器に運ぶことが出来なくなり、筋肉を動かすことが不自由になることが原因です。
気温が高いと汗が止まらなくなり水分とミネラルが出ていくのも原因ですが、気温が体温以上(37℃以上)になると体内の温度を下げることができないため、しびれが現れてから一気に症状が悪化してしまうので、夏場は特に注意が必要となります。
通常、人間の体温は自律神経(24時間体の状態をコントロールしている神経)が管理しており、汗をかくのは体温を下げるための反応なのですが、体温以上に気温が高いといくら汗をかいても体温が下がらないため、自律神経が乱れて体内の各臓器や脳の機能に影響が現れてしまうのです。
また、気温が高くなくても、長時間ハードな運動をしていると、体内の熱が上がり続けることで、熱を下げることができず、同様の症状がおきます。屋内や体調が悪い時にも注意が必要です。
「環境」と「からだ」の要因が重なったときに熱中症が起こりやすくなると考えられています。
注意が必要な時期は、梅雨の晴れ間や梅雨が明けてすぐ、しばらく涼しい日が続いた後急激に暑くなった日などです。
注意が必要な場所は、運動場、公園、海やプールなど、強い日差しが当たる屋外や、駐車場に止めた車の中、体育館、気密性の高いビルやマンションの最上階など。浴室やトイレ、寝室など、家庭内の風通しの悪い室内でも起こりやすくなります。
引用元/第一三共ヘルスケア
気温が低くなるとその状態に体は慣れてしまうので、気温が突然上がりやすい梅雨の間などは、体が突然の気温の変化に対応できず、熱中症によるしびれなどの症状が出ることがありますので、暑い時には一枚脱げるように服装を工夫することで熱中症を予防することができます。
熱は上にこもりやすいので、ビルやマンションの上の階ほど気温が高くなりやすいです。
デスクワークなどで長時間いる場合には、外の気温が低くても通気性のいい素材の服を選び、暑い時にはエアコンや扇風機などで無理せず室温を下げましょう。
熱中症その他の注意したい症状!
熱中症の初期の症状であるめまいや立ちくらみは分かりやすいですが、その他にも筋肉痛やだるさ、手や足の筋肉がつる、けいれんなどがあるので、体調がおかしい時には無理せず体を休める必要があります。
汗を沢山かいて体内の塩分(ナトリウム)が不足した時に、水しか飲まないと血液が酸素を運ぶことが出来なくなり、筋肉の痛みやけいれんなどの症状が出てこれを“熱けいれん”と呼び、電解質(ナトリウムなどのミネラル)がなくなることが原因です。
身体の水分、つまり体液には「電解質(イオン)」が含まれています。
電解質(イオン)とは、水に溶けると電気を通す物質のことです。電解質は水中では電気を帯びたイオンになり、電気を通すようになります。
この電解質(イオン)は、細胞の浸透圧を調節したり、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わるなど、身体にとって重要な役割を果たしています
引用元/大塚製薬
電解質とは、食塩に含まれるナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどで、体内に水分が上手く吸収されるように調整し、筋肉が伸びたり縮んだりするのにも必要な物質ですから、不足すると筋肉痛や筋肉がつってしまうという症状が出てしまいます。
他にも脱水状態が原因で起こる“熱疲労”では、吐き気や全身のだるさ、意識が一時的に薄れるという症状がおきます。
そして、中枢神経という脳から体へ直接信号を送る神経が熱によって異常をきたすと、体が熱くなり、意識がなくなるという重い症状が出るのですぐに病院へ運ぶ必要があるのです。
その他にも、自覚症状が少なく、体調不良だと思っていたらじわじわと症状が進行する“かくれ熱中症”と呼ばれているものもあり、ミネラルの不足や水分の不足が重なって起きる症状もありますので、手や足がしびれたら水分と塩分をしっかりと補給することが大切となります。
参考:蚊に刺されたら体全体が痒くなる!?蚊アレルギーって知ってますか?
熱中症の種類
熱中症には症状の深刻度によってⅠ~Ⅲ度までに分類され、それぞれ症状と対策が異なりますので症状にあった対応が必要となります。
しかし、症状がⅠ度の状態で比較的軽度であっても気温やその日の体調によって、熱中症が進行するスピードが異なるため念には念を入れて、休憩するなどの柔軟な対応が大切です。
また、高齢の方や小さいお子さんは症状に気がつかず、重症化してしまうケースもありますので、気温の高い日は周りの方が十分に気を配ってあげましょう。
I度
めまいや立ちくらみ、筋肉の痛みや手や足がしびれるといった症状が出ます。
この段階では、汗による軽い脱水症状と電解質(ナトリウムなどの塩分)が不足しているだけですので、涼しい場所に移動し、塩分を含む飲み物を飲んで様子を見ましょう。
しかし、利尿作用のあるカフェインを含むコーヒーやお茶、紅茶では、逆に症状が悪化してしまうので、スポーツドリンクなどの電解質を含む飲み物を選んでください。
また、栄養ドリンク剤やエナジードリンクもカフェインを多く含むので、熱中症の症状が出ている時には向きません。まだ初期症状だと油断せずに、これから悪化することも考えて、無理をしないようにし、日陰を選んで歩き、こまめに水分を補給して下さい。
※アスファルトの照り返しも体温が上昇する原因となるので、日差しが強い日中は注意が必要です。
II度
頭痛、だるさや吐き気(実際に吐いてしまうこともあります)、また一時的に意識が薄れるという症状が出ます。
Ⅰ度よりも症状が進み、脱水症状の他に体を冷やすために自律神経が血管を拡張し、血液が大量に流れることが原因です。自律神経が一度乱れると、頭痛は数日続くこともあります。
このような症状が出たら、すぐに涼しい場所(クーラーの効いた室内など)に移動し、体を冷やすことが必要です。
吐き気があるうちは無理して食事はせずに、水分と塩分を補給し、しっかりと体を休めましょう。(ゼリー飲料など簡単に摂れるものがあれば無理しない範囲でお腹に入れて下さい)
アイスノンで太い血管のある首筋や、両脇を冷やして安静にすることが大切です。※首筋は急激に冷やしすぎると、強い肩こりで痛む場合があるので、タオルなどでくるみ温度を調整しましょう
そして、衣服は締め付けがないゆったりしたものを着て、血行不良となる原因はなるべく取り除くことも大切です。
この段階ではかなり熱中症が進んでおり、体が体力を消費して疲れてしまっているので病院へ行き、無理せずに症状がおさまってもすぐに健康な時のように動かず、様子をみながら体を慣らしていってください。
III度
体が高温となり、意識がはっきりしない、体が上手く動かすことが出来ないという重い症状が出ます。
この状態になると、一刻も早く救急車を呼んで病院に行かなければ命に関わる状態です。
40度以上の高熱、意識障害、けいれん、異常行動などを起こすことがあり、この状態を熱射病といいます。
脳内の温度が上昇することで中枢神経に異常が起こり、からだのさまざまな臓器に障害が出て、命を落とすこともある危険な状態です。
引用元/第一三共ヘルスケア
もちろん自分ではなんとかすることができませんし、脳から体への信号が正しく送れない状態なので、すぐに病院でお医者さんの治療を受けることが必要となります。
また、数日間症状が続く場合が多いので無理をしないのは当然ですが、症状がおさまった後には、体や脳に異常が起こっていないか病院で検査を受けましょう。
仕事や退院についてもお医者さんの指示にきちんと従うことが大切です。
参考:痛い…日焼けが原因の水ぶくれの痕が残らないようにする対処法まとめ
熱中症のサイン
めまいや多量の汗、体や手足のしびれ、全身のだるさ、熱っぽさや注意力の低下、筋肉痛などがあげられます。
気温や湿度が高い環境のなかで、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、体に力が入らない、ぐったりする、呼びかけへの反応がおかしい、けいれんがある、まっすぐに走れない・歩けない、体が熱いなどの症状がみられたときには、すぐに熱中症が疑われます。
なかでも、高体温、汗をかいていなくて触ると熱い、ズキンズキンとする頭痛、めまいや吐き気、意識障害がある場合は、重症です。
引用元/全日本病院協会
これらの症状がみられたら、ミネラルと水分補給を十分にして、無理をしないことが大切です。
また、他にも熱中症の症状として下痢があり、お腹が下っていると食事が栄養にならず、水分もすぐに出てしまうので、ひどい場合には病院で診察を受けて下さい。
熱中症は、悪化すると命に関わる病気ですので、気温が高い日は特に気をつけて、涼しい場所で休憩をとりながら活動しましょう。
気温が高いと症状の進行するスピードも早いので、毎日の健康管理と通気性のいい服装で出かけるといった工夫も必要です。
熱中症になりやすい人
糖尿病や心臓病などを患っている方や、高齢の方、肥満気味の方は熱中症になるリスクが高くなります。
高齢になると体の中の水分の量が減って、汗をかきにくくなるため熱中症の症状に気づきにくくなり、また、肥満気味の方は脂肪により熱が逃げて行かないのでリスクが高いです。
そして、幼児や小さいお子さんも注意が必要ですが、他にも心臓病などの病気を抱えていると、病気や治療のための薬が熱中症のリスクを高める場合があります。
心臓病、糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病も、体温調節機能の乱れの原因となることがあり、ハイリスク要因に。病気の治療のために薬を服用している場合も、薬の種類によって発汗の抑制や利尿作用があるものがあり、熱中症の原因になることがあります。
引用元/第一三共ヘルスケア
持病のある方や、熱中症になりやすい方は気温の高い日は特に警戒し、予防に努めましょう。
参考:何で足の甲だけかゆい?!原因とかゆみを抑える対処法まとめ
症状が出た時の対処方法は?
軽度の場合には塩分を含んだ飲み物で水分補給してください。
症状が深刻な場合には涼しい場所で体を冷やす、体を休めるといった処置をし、重症で意識がはっきりとしない場合にはすぐに救急車を呼んで病院へ運ぶ必要があります。
軽度の意識がはっきりとしていて手足のしびれがある場合には、塩分を含んだ飲み物(スポーツドリンクなど)で水分補給することで改善することが多いですが、それでも気温が高い日はなるべく薄着をする、日陰を選びこまめな休憩と水分補給を心がけて、症状が悪化しないように無理をしないことが大切です。
吐き気や頭痛が出たら安静にする
吐き気や頭痛は熱中症の症状の3つの分類のうち、Ⅱ度の症状でⅢ度になると意識の薄れ、手足の筋肉のけいれんなどの重い症状が出る前の段階なので、体を冷やして安静にし、ひどい場合には病院で診察を受けましょう。
また、吐き気があると食べられる量が少なくなり、十分に栄養が取れないので、体力が低下して症状が悪化しやすいです。
ですから、頭痛や吐き気という症状が出たら、自宅で安静にし、首筋や脇の下を冷やして症状の改善を優先して下さい。
あとは、締め付けがない衣服に着替えて血の流れをよくし、部屋の温度や湿度も快適な温度まで下げ、水分と塩分を十分に補給して回復するのを待ちましょう。
意識がはっきりしない場合には迷わず救急車
熱中症で意識がはっきりしない場合には、すでにかなり重度の症状ですから、救急車を呼んで病院でお医者さんの診察を受けて下さい。
熱中症の症状が出ているのに無理をしてしまったり、激しいスポーツや気温が高い日が続く場合には、すぐに重度の症状が出ることがあり、放置すると後遺症が残ったり、最悪、死に至るので、救急車を呼びましょう。
他にも、前日にアルコールを多く飲んでいたり、体調不良や、疲労が溜まっている場合には、熱中症になりやすいので、自分で気がついた場合はもちろん、周りの方の様子がおかしい時には、意識がしっかりしているか気にかけてあげて下さい。
※アルコールには利尿作用があるので、脱水症状が起きやすくなります。
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まとめ
熱中症で体や手足のしびれがある場合には、塩分を含んだ飲み物で水分補給しましょう。
気温がそれほど高くなくても、ハードなスポーツをした時や、汗を沢山かいて塩分が失われた時に水で水分補給をしてしまうと、血液の塩分が薄くなり熱中症になることがあります。
気温が高い日は、こまめな水分補給と涼しい場所で休憩を心がけて、無理をしないことが大切です。
参考:体が熱い!体が火照っている原因は?対処法も紹介します!