インフルエンザが原因で、肺炎に感染することをご存知ですか?
肺炎はインフルエンザだけではなく、さまざまな原因でかかるケースがあり、誰もが身近なものなんです。
今回はインフルエンザが原因の肺炎に焦点をあて、原因と対処法にどんなものがあるのか、さっそく見ていきましょう。
目次
肺炎ってどんな病気?
肺炎は大きく分けると『市中肺炎』と『院内肺炎』に分けられます。
市中肺炎
病院の外でかかる肺炎のこと。
風邪やインフルエンザが原因で引き起こす肺炎も含まれます。
院内肺炎
入院中にかかる肺炎のこと。入院後、48時間以降にかかる肺炎を指します。
人工呼吸器などで気管に管を通している場合になりやすい肺炎です。市中肺炎に比べて、予防が難しいとされていますね。
肺炎の死亡率の高さは要注意
肺炎は不治の病ではありませんが、死亡率の高い病です。
厚生労働省『人口動態統計年報 主要統計表』による、日本人の死亡原因ワースト5を見てみましょう。
1位 がん(悪性新生物)
2位 心臓病(心疾患)
3位 脳卒中(脳血管疾患)
4位 肺炎
5位 老衰出典:厚生労働省
第4位に肺炎があがっています。驚きです。年齢によるところが大きいようですが、若い方でも風邪の延長のように考えていると命取りになる病気なんです。ご存知でしたか?
最近ではコメディアンの志村けんさんが、肺炎で入院し舞台を中断したとのニュースが流れましたね。志村けんさんの肺炎の詳細は不明ですが、年配の方による誤嚥(ごえん-食べ物や飲み物、唾液などが誤って気管に入り込むこと)が原因で引き起こす肺炎も珍しくはありません。
また、肺炎は特別な菌が存在しているわけではなく、「常在菌」によって引き起こされるもの。冬にかかりやすいというイメージがありますが、季節に関係なく感染する可能性がある病気です。
肺炎は他の人に感染する
肺炎は咳やくしゃみによって病原体が飛び散り、飛沫感染します。免疫力が弱まっていたり、体力が落ちている人は感染する確率が高くなるということ。
症状が治まっても菌が完全に消滅したわけではありませんので、肺炎に感染している人にはできるだけ会わないようにしましょう。どうしても会う場合は最低限マスクの装着を心がけます。
感染しにくいとされる肺炎
- 風邪をこじらせたもの
- 誤嚥によるもの
感染しやすいとされる肺炎
- インフルエンザ肺炎
- マイコプラズマ肺炎
- その他、細菌が引き起こす肺炎
インフルエンザが原因で肺炎を引き起こした時の症状
インフルエンザにかかると、頭痛、悪寒、38度以上の高熱が通常3~4日続き、次第に回復を見せ始めるのが一般的です。
発熱して4日以上経っているのに熱が下がらなかったり、一度下がったけれど再び発熱した場合は肺炎による合併症の可能性があります。
インフルエンザによる肺炎の主な症状
- 高熱が5日以上続く
- ひどい咳や痰、呼吸困難
- 胸が痛む
- 食欲がでない
- 全身の倦怠感や悪寒
- 筋肉痛や関節痛
- 頭痛
- 呼吸数が増えたり、脈が早くなる
- 嘔吐
- 顔や唇が紫色になる(チアノーゼ)
高齢者の場合、熱がでないこともあります。
インフルエンザから肺炎にかかるまでの仕組み
普段、私たちの身体には、菌やウイルスと戦ったり排除できる機能が備わっています。
まず、鼻毛や鼻の粘膜、咳や痰で大きな粒子を追い出す機能。そこを通り抜けて気管に侵入してきても、気管支に生えている線毛が1秒間に15回の速さで外へ排出します。
さらに免疫という機能が備わっているので、菌やウイルスの侵入をとことん許しません。
ですが、インフルエンザにかかるとこの気管支の上皮細胞が壊されることがあり、肺に菌やウイルスが侵入し炎症を起こします。また、免疫機能も落ちているため、血液中に炎症を引き起こす物質が増加。全身が炎症を起こし、肺炎にかかるというメカニズムです。
肺炎を引き起こす原因菌ワースト5
肺に炎症を引き起こす「原因菌」とは、一体どんな菌でしょう。
以下は、日本呼吸器学界 成人市中肺炎ガイドラインより抜粋したものです。
市中肺炎232例の原因菌 ワースト5
スポンサーリンク1位 肺炎球菌
2位 インフルエンザ菌
3位 マイコプラズマ
4位 クラミジア・ニューモニエ
5位 レジオネラ
出典:成人市中肺炎ガイドライン
1位の肺炎球菌は、232種類の菌のうち24.6%を占めています。肺炎球菌とは、健康な人の鼻や咽喉の奥に常在している身近な常在菌。毒性の強い菌ですが、普段は免疫機能があるため身体に侵入してくることはありません。
2位のインフルエンザ菌ですが、インフルエンザウイルスとは違う細菌を指します。インフルエンザはウイルスによって引き起こされますが、インフルエンザ菌は気道上部に常在する、こちらも常在菌。保有率は小児で50%、成人では5~10%とされています。
1800年代にインフルエンザの原因と考えられていた細菌でしたが、その後インフルエンザウイルスが発見されたため名前だけが残り、このような紛らわしい名称となりました。
ちなみに、インフルエンザウイルスが直接肺炎を引き起こす可能性はあまりないようです。
インフルエンザから二次感染にかかりやすい方
- 小児
- 心臓や呼吸器に病気を持っている方
- 糖尿病、腎臓病、免疫不全などを持っている方
- 長期療養施設に入所している方
- 50歳以上の方
※ 新型インフルエンザでは上記に当てはまる若年者や妊婦も肺炎を合併しやすい
インフルエンザから肺炎にならないためにすべきこと
インフルエンザによる二次感染を引き起こさないようにするために、注意しなくてはいけないこと、すべきことをまとめました。
インフルエンザを徹底的に完治させること
インフルエンザが身体の抵抗力を落としてしまうことが原因ですから、まずはインフルエンザの完治が先決です。
十分な休養をとり、水分をたくさんとるように心がけをして下さい。また、食欲があるようなら、バランスの良い食事をして体力を戻しましょう。
うがい・手洗いを心がけること
インフルエンザの熱が下がり、起き上がれそうになったらうがい手洗いをするようにしましょう。
歯磨きなどで口の中を清潔に保つことも大切です。
医師から処方されたインフルエンザ治療薬は最後まで飲みきること
どの病気にも言えますが、薬は症状に応じた量と期間を考えられて処方されています。特にインフルエンザは、症状が軽くなってもウイルスは死滅していません。
意外に飲みきらない人が多いのが現実ですが、必ず用法・用量を守って最後まで飲みきるようにしましょう。
医師に早めの相談をすること
肺炎にかかりやすい傾向にある方は、前もって医師に相談しましょう。
あらかじめ抗菌薬が処方される場合があります。
もしかかってしまったら…
二次感染の症状と思ったら、医師に早めの相談をしましょう。適切な治療をするために、微生物の検査をすることがありますので、医師には詳しい症状を伝えるようにして下さい。
肺炎は治療で完治できる病気ですが、発見が遅れた場合命にかかわる場合もあります。
また、インフルエンザ同様、肺炎の治療薬は用法・用量を守って最後まで飲みきることがもっとも重要。症状が軽くなっても、肺炎を起こしている菌はまだ残っています。
抗菌薬を途中でやめると再び肺炎にかかる恐れがあり、抗菌薬に強い耐性菌が増殖する場合も。医師の診断で完治と告げられるまでは、薬の服用は指示に従いましょう。
医師への報告は大切です。適切な治療を受けるためにも、おくすり手帳を提出したり、過去にあった病気、現在の症状をきちんと話すことが治療の第一歩となります。
予防接種
インフルエンザの予防接種
インフルエンザワクチンの接種をしても、絶対に感染しないというものではありません。ですが、症状の発症を抑える一定の働きが認められています。また、インフルエンザが肺炎などの重い合併症を起こす場合に、インフルエンザのワクチンはもっとも効果があるとされています。
※平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」の報告では、65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとされています。
出典:厚生労働省Q&Aより
加入している健康保険組合によって、補助金が受けられる場合があります。詳しくはご加入されている健康保険組合にお問い合わせ下さい。会社員であれば、総務課に聞いてみると良いでしょう。
参考:インフルエンザの予防接種に副反応アリ?発熱することも!?
肺炎球菌の予防接種
平成26年から平成30年まで、高齢者の肺炎球菌の予防接種費用が、一部補助されます。
対象となる年齢は毎年変更するので、こちらをご確認下さい。
または、かかりつけの病院にお問い合わせした方が詳しい話ができます。
参考:今年もインフルエンザの時期が!気をつけるべき流行時期は?
まとめ
インフルエンザや肺炎にかからないようにするためには、普段からの身体作りと、予防が何よりも大切です。
手洗いやうがい、栄養バランスの良い食事、適度な睡眠と運動。風邪やインフルエンザが流行する時期は、健康なうちにマスクをしてしまうのも1つの策です。
特に働き盛りの人には難しいかもしれませんが、できるだけ普段からしっかりと健康的な規則正しい生活を送ることを意識してみましょうね。
参考:インフルエンザ対策を全て網羅!予防から対処法までまとめ