下腹部が痛くなるというのは誰しも経験することですが、あまりにも激しい痛みや長期に渡る場合には危険な病気の場合もあるので、注意が必要です。
さらに、下腹部痛には男性特有の病気も関係している場合がありますので、思い当たる症状がある時には、病院で検査をする必要がある場合もあります。
今回は、下腹部痛が起きた時に男性が特に気をつけるべき症状と原因について解説していきますので、最後までしっかり目を通していってくださいね。
目次
下腹部痛で男性が気をつけるべき症状とは?
下腹部痛があり、排尿時に違和感がある場合には前立腺炎の可能性があり、前立腺がんを併発していることもあるので注意が必要です。
男性の下腹部痛で特に気をつけるのは前立腺炎ですが、前立腺がんも併発している場合があるため、排尿時におかしいと思ったら早めに検査にいきましょう。
排尿症状:頻尿、残尿感、尿の勢いが弱い、排尿後尿が漏れてくる、排尿痛、尿道の違和感
腹部症状:下腹部、足の付け根、会陰部(肛門の前)の鈍痛、違和感、不快感
その他:睾丸の鈍痛や不快感。陰のうの痒み。下肢(特に太もも)の違和感、しびれ感。勃起障害(ED)の原因になることもあります。引用元・かねとう腎泌尿器科クリニック
前立腺炎になると下腹部痛だけではなく、かなり広範囲に痛みや不快感が現れてきます。
また、前立腺炎は前立腺がんと(発生のメカニズムにおいて)直接の関係はありませんが、併発することもあるので、まずは前立腺炎が悪化する前に早めに検査をして治療することが大切ですよ。
前立腺炎には慢性前立腺炎と、急性前立腺炎がありそれぞれ症状が違うことも覚えておきましょう。
急性前立腺炎と慢性前立腺炎の違い
急性前立腺は細菌が原因の病気で、高熱や前立腺が大きく腫れるなど症状も重くすぐに治療が必要ですが、慢性の場合にはそれほど症状は重くなく、下腹部痛や排尿時の違和感が長く続きます。
多くは尿道から、細菌が前立腺の内部に侵入し激しい炎症を起こすもので、急性細菌性前立腺炎とも称されます。
尿道カテーテル挿入などの泌尿器科的処置、性行為など細菌感染の契機が明らかな場合もありますが、何の前触れもなく発症することも少なくありません。
引用元・まつもと泌尿器科
急性前立腺炎のポイントは、尿道から直接細菌が入って炎症が起こるということで、症状の進行が非常に早く、38℃以上の高熱、排尿する際の痛み、激しい下腹部痛が広範囲に及ぶので、病院にすぐ向かってください。
症状が悪化すると、敗血症(はいけっしょう)といって命に関わる病気が発症することもあります。
敗血症とは、血液中に病原体が入り込むことで引き起こされる、重篤な全身感染症です。敗血症を起こす感染症として、尿路感染症や肺炎、腹膜炎などがあります。
性行為によって急性前立腺炎に感染することもありますが、病院で入院した際に尿道カテーテルを挿入した場合や、器具から細菌感染することもあり、その他にも何らかの拍子に尿道に細菌が入ってしまい感染するなど、原因がはっきりとしないこともありますので、思い当たることがなくても下腹部や下半身、陰部に激痛が走ったら、すぐに病院にいきましょう。
慢性前立腺炎はストレスや姿勢も関係
前立腺炎は細菌の侵入だけではなく、ストレスや長時間デスクワークなどで同じ姿勢をしていることや、バイクなどで前立腺に刺激を与え続けることでも起こります。
ストレスや同じ姿勢を取り続けることで血行が悪くなると、免疫力が弱くなり、少しの細菌が原因となり前立腺炎を引き起こしてしまうので、きちんと休息をとることが一番の予防策ですが、忙しさのあまり休息をとれずに疲労が蓄積されている生活を送っていると前立腺炎にかかりやすくなってしまうので注意してください。
疲労が溜まっている時は、なるべく早めに寝るように心がけて、余裕があればストレッチやマッサージで体の筋肉をほぐして血行を良くしましょう。(ビタミン類の豊富な野菜を取るのも効果的です)
また、(排尿時の違和感、痛みなど)前立腺炎の兆候が現れたら早めに病院で治療することで、1人で不安を抱え込まないようにしてください。
精巣上体炎にも注意
他にも男性が注意するべき病気として、精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)という病気があります。
副睾丸(精巣上体)は睾丸で作られた精子を成熟させ、送り出す大切な臓器ですが、前立腺炎と同じく細菌が入ってしまうと炎症を起こしてしまうので注意が必要です。
前立腺炎や尿道炎、また、膀胱炎の原因菌が精巣上体に侵入して炎症を起こすこともありますので、早めにこれらの症状を改善することが予防となります。
あと、加齢による前立腺炎肥大により、尿が出にくくなることが原因で、細菌が侵入してしまうこともあるので(前立腺肥大が始まる)50歳以上になったら定期的に検査を受けることも大切です。※前立腺肥大のメカニズムはまだはっきりと分かっていないので、予防のために一度検査に行くことをおすすめします。
そして、急性精巣上体炎が発症すると、非常に症状が重くなり、自由に歩けなくなることもありますので、悪化する前にお医者さんの診察を受けましょう。
急性精巣上体炎では、精巣と精巣上体が収まっている陰嚢に痛みや腫れ、しこりが現れ、高熱(38℃以上)や悪寒が見られます。重症化すると陰嚢の皮膚が赤みを帯びてきて硬く腫れあがります。
また精子の通り道である精管にそって炎症が広がると、鼠径部(太ももの付け根)や下腹部に痛みが現れたり、さらに悪化すると、精巣と精巣上体がひとかたまりになって腫大し、歩くことが不自由になる場合もあります。陰嚢の中に膿がたまり、破れて出てくることもあります。
急性精巣上体炎が治らず慢性化すると、精巣上体にしこりが見られますが、痛みや発熱はありません。
引用元・五本木クリニック
下腹部痛や発熱も大変ですが、陰嚢(いんのう;睾丸が入っている袋)が、腫れ上がると男性にとって非常に深刻な事態となります。
おかしいと感じたら、泌尿器科の簡単な尿検査で診察できますので、悪化する前に勇気を出して検査を受けることで、深刻な事態を避けましょう。
前立腺がん
前立腺がんは腹痛とは直接関係ありませんが、進行が遅い分転移する可能性が高いがんなので、前立腺の異常が見つかったら合わせて検査をしてください。
前立腺炎と前立腺がんはできる場所が違うので、前立腺炎だから前立腺がんの疑いがあるというわけではありませんが、前立腺がんは初期の段階ではほとんど無症状で、自分で気がつく頃にはかなり症状が進んでいますので、泌尿器科にいく機会があるなら検査をしておきましょう。
がんが大きくなってくると、尿が出にくくなるばかりか、骨に転移することもありますので、早期に発見することが重要です。
前立腺がんの原因の1つは高カロリーな脂肪が多い食生活と言われているので、ビタミンの多い緑黄色野菜や食物繊維の多いバランスの取れた食事と、アルコールを飲みすぎないようにしましょう。
下腹部痛で男性に考えられる他の原因とは?
ストレスを多く抱えることで腸が刺激を受け、下腹部痛や便秘、下痢などの症状が出る”過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん;略称IBS)”があります。
これは、男性に限った病気ではありませんが、検査では異常がないのに急にトイレに行きたくなったり、ガスが溜まってしまうため、非常に厄介な病気です。
主な症状は、腹痛もしくは腹部不快感と便通異常です。腹痛は、左下腹部に最も多くみられますが、部位が一定しないものも少なくありません。
腹痛の性状は、 発作的に起こる疝痛(せんつう) (さし込むような痛み)、または持続性の鈍痛のいずれかで、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向を示します。
一般的に、食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。
引用元・東京日野市 森末クリニック
人間の体は、食べ物が入る口から食道、胃、腸を通って要らないものが排泄される肛門まで、一本の管でつながっており、これをひっくるめて消化管というのですが、過敏性腸症候群(IBS)が起こる原因は、消化管の異常よりもストレスで起こることが多いため、自分でも病気だと気がつかない場合があるのが大きな特徴となります。
過敏性腸症候群が治りにくい原因は不安!
ストレスが原因で起こるので、症状が起こるたびに「また起きるのではないか?」と不安になってしまい、さらに、ストレスを抱え込むことで症状を悪化させてしまうのです。
お仕事をされている方や学生さんなら、電車や車に乗っている時にはトイレにすぐ行くことができないため、常に不安にさらされることで過敏性腸症候群が治りにくくなってしまいます。
さらに、長期化すると脳へ送られるホルモンにも影響がでてしまうのです。
IBSの患者さんでは、痛みに対して敏感になっているため、ちょっとした刺激にも腸管が反応して、便通の異常やおなかの強い痛みといった症状を起こします。
こうして体が感じたストレスは、脳へと届けられます。すると、再びストレス関連ホルモンの分泌が促されて、おなかの痛みなどを引き起こし、IBSの症状が悪化していきます。この悪循環を「IBSスパイラル」と呼んでいます。
引用元・田辺三菱製薬
お腹の異常に敏感になっていると、少しの痛みがストレスとなり、それが脳に送られることで脳がホルモンを分泌し腸が活発に活動して、便意をもよおしてしまいます。
市販のお薬で一時的に便意を抑えるものもありますが、根本的に過敏性腸症候群を改善するにはストレスや現在の腸内の状態を検査し、他の病気にかかっていないことを確かめた上で治療することが大切となりますので、自分だけで悩まずにお医者さんの診察を受けましょう。(まずは、消化器内科を受診してくださいね)
参考:緊張したらスグに腹痛が!吐き気や下痢を抑える対処法は?
激痛を伴う尿路結石
尿の通り道に不要な栄養素が溜まって結晶となり(これを結石といいます)、尿路をふさいでしまうことで、動けないほどの激痛が走る尿管結石(にょうろけっせき)にも注意が必要です。
尿は腎臓で作られ尿管を流れ、膀胱(ぼうこう)、尿道という流れで排出されるのですが、そのどこかで流れが結石(けっせき)によってせき止められてしまうので、体に激痛が走ります。
結石が腎から尿管に下降すると発作的な激しい痛みが側腹から背部にかけて起こります。吐き気や、冷や汗をともない、顔面蒼白となります。
症状は疼痛、血尿、排石(尿といっしょに自然に結石が出ること)が3主症状になります。血尿の程度はさまざまで血の塊が出る事もあれば、肉眼ではわからな いものまでいろいろです。
そのほか頻尿、陰のう痛などもみられることがあります。結石が尿管に詰まったり、尿道に詰まってしまうと、尿が出なくなってしまう事もあります。
これは、緊急で処置する必要があります。
引用元・正友会 島医院
尿路結石では、もちろんすぐに病院で治療を受けることになりますが、普段の食生活がこの病気の原因ですので、バランスのよい食生活を心がけましょう。
特に寝る直前に食事をすると、それから運動などエネルギーを使うことがないため、栄養素が消化されずに体内に残ってしまい、結石ができる原因となるので避けて下さい。
また、適度な水分補給も大切ですが、糖分が含まれているものやアルコールではなく、水やお茶をこまめに飲むことをおすすめします。
下腹部痛を引き起こす意外な原因とは?
人工甘味料を使ったドリンクや食品は、カロリーや虫歯になるのを抑えるのに効果的ですが、下痢を起こしやすくなるため大量に取るのは良くありません。
現在、いろいろな人工甘味料が出てきていますが、やはり自然にあるものではないため、体質に合わなかったり、消化を妨げる原因になってしまうこともあります。
特に注意する必要のある方は、過敏性腸症候群を発症している方で、今は、ガムから漬物にまで人工甘味料が使われていますので、気が付かないうちに大量に摂取してしまっていることがあるので注意しましょう。
その摂取量は考えなければなりません。糖アルコールの中でも下痢をしにくいエリスリトールも、これを含むスポーツドリンクを大量に摂取して下痢をおこして問題になりました。
また、人工甘味料を日常の食品のなかで完全に砂糖に置き換えるとの考えにも無理があります。糖アルコールを砂糖に完全に置き換えた餌を与え続けると、多くのネズミは死んでしまいます。
この例からも理解されるように、甘味料を含んだ食品は、お菓子、トローチ、シロップ系薬剤など食事以外の時間に摂取されるものに限定し、歯垢のpHを低下させる頻度を下げてむし歯を予防するために使用されるべきです。
カロリーオフと書かれていなくても、人工甘味料の中には砂糖の300倍の甘さがある(エリスリトール)など、商品の製造をする際に大幅なコスト削減に繋がるために使われているものがあるので、完全に避けるのは難しいと思いますが、裏の成分表示を見てあまりにも化学物質(カタカナで書かれている成分)が多いものは避けた方がよいでしょう。
また、人工甘味料にも普通の食品と同じようにアレルギーの危険性があるので、特定の加工食品を食べ続けてお腹の調子がおかしくなったり、じんましんができるなどの症状が出た場合には、少し面倒かもしれませんが、病院でアレルギーの検査を受けることをおすすめします。
参考:アレルギーの検査費用や方法は何がある?保険適用できる?
まとめ
男性が特に下腹部痛が起きた時気をつけるべき病気は、前立腺炎と精巣上体炎でともに悪化すると重い病気にかかる経験があるため、早めに治療してリスクを少しでも減らしましょう。
過敏性腸症候群はストレスが一番の原因であり、放置するとストレスが回り回って悪化するばかりなので、1人で無理をせずにお医者さんの診断を早めに受けて下さいね。
参考:睡眠中の夜中に突然腹痛がやってくる!夜中にお腹を壊す原因は?