みなさんは、鼻から挿入する内視鏡検査の方法をご存じでしょうか?
最近、徐々に知られるようになってきている鼻からの内視鏡検査ですが、胃カメラを鼻から入れるメリットや、口から入れる場合との違いなどはあまり知られていませんよね。
特に、胃の検査はバリウムを飲まなきゃ診察できないのでは?など、そもそも内視鏡についてよく知らない…そんな方は多いはずです。
「胃カメラって苦しいもの」、「バリウムを飲まなきゃいけない」と思っている方には是非知っていただきたい、鼻からの内視鏡検査である“経鼻(けいび)胃カメラ”と、口からの検査である“経口(けいこう)胃カメラ”に違いについて、ご紹介してきますね。
目次
胃カメラは鼻から入れるべき?口との違い
これまで、内視鏡は口から挿入する「経口胃カメラ」が一般的でした。
しかし、最近では医学の進歩や医療機器がどんどん進化してきたので、太さが約5mmの細い内視鏡が登場したのです!徐々に一般的にも知られるようになってきて、 “経鼻内視鏡検査”という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきているんですよ。
経鼻内視鏡検査は、内視鏡が舌のつけ根を通らず、のどにも触れないことが大きな特徴と言われています。
一方で経口胃カメラは、どんなに細くなったと言われるチューブを使っても舌のつけ根を通過するため内視鏡が当たってしまい、「オエッ」となる嘔吐反射(おうとはんしゃ)が誘発されてしまいます…。
もちろん、のどの麻酔などの調節で嘔吐反射が出ないようにすることもできますが、検査中には声を出すことができず、何かあっても訴えられないことで恐怖感をお持ちの方も多いかもしれません。
では、実際に喉と鼻からの胃カメラはどちらが良いのか、それぞれのメリット・デメリットを紹介していきます。
胃カメラを鼻から入れるメリット
2000年頃から登場した経鼻胃カメラのおかけで、「鼻から入れる胃の内視鏡検査は辛くない」と多くの方々が喜んでおり、経験された方のうち9割以上が「次回も鼻から」の検査を希望されているそう。
なぜ辛くないのか?胃カメラを鼻から入れる3つのメリットについて詳しく解説いたします。
メリットの一つ目は、スコープが大変細いものを使用するため、苦しい思いをすることが少ないこと。経鼻内視鏡は鼻にスムーズに挿入できるスコープは約5mmの細さで、痛みを感じることがほとんどないと言われています。
二つ目は、内視鏡が舌のつけ根(口蓋と呼ばれる場所)を通らないので、吐き気をほとんど感じずに嘔吐が起きにくくなるのです。
三つ目は、会話ができること。検査中も会話が可能なため、質問したいときには自由に医師とお話することができるで、とても安心ですよね。
次も鼻から」と検査を希望された方のほとんどは、このメリットを実感された方々です。胃カメラは苦痛が多いはず…と思われている方には、嬉しい検査方法と言えるのではないでしょうか。
胃カメラを鼻から入れるデメリット
一方、デメリットはどうでしょう?
前述した内視鏡の太さの2~5mmの差というのは、内視鏡の解像度や性能に大きく関わってきます。
医療機器の急速な進歩で、非常に細くなったと言われる内視鏡ですが、先端に装着されているCCDカメラの解像度がそこまで高くはなく、胃の中で出す光も暗く詳細な観察が難しいと言われているんですね。
また、細くなっているがために鉗子孔(かんしこう)といって病変があった時に組織を採取するための道具が通る部分が細く、十分な組織が採れなかったりする場合も。つまり、病気が見つかった時の対応に問題が出てくるのです。
内視鏡で出血しないようお薬を注入しますが、どうしても鼻粘膜が弱い方などは避けた方がよいでしょう。
経口胃カメラよりも断然苦痛が少ないからとは言え、様々な点でどちらが良いのかを見極めることが大切ですよ。次は、経口胃カメラについてのメリットやデメリットを解説していきますね。
胃カメラを口から入れるメリット
経口胃カメラの最大のメリットは、万が一ポリープなどの病変が見つかった場合に、迅速で精密な観察が出来るということです。
カメラの管が太いため、ライトも明るいので病変部分をより鮮明に見られる大きなメリットがあります。また、検査と同時にポリープ切除や細胞採取など素早い処置が行えることも大切なメリットになります。
胃カメラを口から入れるデメリット
もうすでにお気づきかもしれませんが、経口胃カメラのデメリットは、何と言っても咽頭部を刺激するため、吐き気や苦しさなどの不快感があることです。
麻酔薬(鎮痛剤)を使用するため、気分が悪くなるなど副作用の可能性があることや、麻酔効果が緩和するまで時間がかかることなどが挙げられるでしょう。
ここまでで、経鼻胃カメラと経口胃カメラの違いについては、ご理解いただけたでしょうか?やはり、検査時の苦痛感からはどうしても逃れたい…そう思った方は多いと思います。
そこで、経鼻胃カメラをどのように受診するのか、検査の流れを見ていきましょう。
胃カメラを鼻から入れるまでの流れ
ここからは、胃カメラを鼻から入れるまでの大きな流れを説明していきます。
- 鼻のむくみを抑えたり、出血を最小限にするため、鼻粘膜に血管収縮剤をスプレーします。お薬の効き目を5分ほど待ちます。
- 内視鏡を通すために、鼻腔付近へ局所麻酔薬をスプレーします。医療機関により、2回違うタイプの麻酔剤を使うクリニックもあるそう。こちらは麻酔が効くまで5〜10分ほど待つことになります。尚、局所麻酔のため、眠くなることはありません。
- 内視鏡のチューブを鼻からゆっくりと挿入していきます。咽頭部〜食道〜胃〜十二指腸の順に、上部消化管を観察します。(この際、検査中でもモニターを見ながら、医師と自由に会話することができます。)
麻酔が効いている間は、食事をとることはできません。しかし、局所麻酔では全身への負担が少ないため、当日でもお仕事に戻ることも可能です。
原則として眠くなる麻酔を注射しないので、すぐに帰宅できます。
ただし検査当日のアルコール摂取、入浴は避けましょう(シャワーは可能)。
引用元/千葉マリンクリニック
前日に気をつけること
- 来院12時間前から飲食はしないこと。水以外は飲まないで下さい
- 普段から就寝前に薬を服用している方は、通常通り飲んでも大丈夫です
- 睡眠不足などに気をつけましょう
当日に気をつけること
- 麻酔効果が継続している間は何も飲食しないで下さい。水は大丈夫です
- 通常飲んでいるお薬は、検査終了後に服用して下さい
- タバコやカフェインなど刺激があるものは摂取に十分気をつけましょう
麻酔をする
流れのところでご紹介しましたが、経鼻胃カメラの場合は、局所麻酔をしていきます。
内視鏡を通すために、鼻腔付近へ局所麻酔薬をスプレーする鼻の麻酔を行います。医療機関により、違うタイプの麻酔剤を2回使うクリニックもあるそうなので、心配な方は予約する時にチェックするようにしてくださいね。
麻酔のあとは、どちらか鼻の通りが良い方の鼻腔からカメラと同じ太さ(約5㎜)のカテーテルを挿入します。
最低でも約30分ほどは麻酔が効いていますので、その間は飲食を我慢しましょう。なお、タバコも麻酔が効いている間はNGです。
胃カメラの検査費用
次は気になるその検査費用(3割負担の場合)ですが、胃カメラ検査のみでは3,460円~4,000円(5分~10分)くらいになると思います。
もし、ここでポリープなどの病変が見つかってしまった場合は、プラスαでお値段が必要となります。その場合は、対処方法によって値段が変わります。
いかがでしょうか。医療機関により多少の前後がありますが、検査のみであれば、金額として、高すぎない値段ではないかと思います。
参考:胃下垂の診断はどこで受ける?セルフチェックで判断できる?
まとめ
現在、悪性腫瘍の発生部位で1位は大腸がん、2位は胃がんだと言われているのはご存知でしょうか。
胃がんは早期発見できればその多くは治療が可能になっており、定期検診の重要が謳われています。
今回取り上げた「内視鏡検査」には、口から入れる「経口」と鼻から入れる「経鼻」とがありましたね。
特に「経鼻」では近年直径が小さく管も柔らかい胃カメラが登場しました。数年前までは、「バリウム」での胃X線検診のエビデンスが高く、胃内視鏡検査はグレードといって検査としての信頼性が低い扱いと言われてきました。
しかし、ここ最近の医療機器の急速な進歩により、バリウムでの胃X線検診と同じグレードまで引き上げられました。
胃内視鏡検診は、胃X線検診と共に対策型検診・任意型検診の新たな方法として推奨された。
引用元/国立がん研究センター
近年の研究結果から、胃内視鏡検査のエビデンスが正式に認められました。そして、鼻から入れる胃カメラにより、検査が苦手だった方も受診率が高まることによって病変の発見が早まっているのです。
体への負担も軽減されているため、検査当日からお仕事も可能なんですよ。“早期発見”が何よりも重要。体のことを考えて、定期的に受診するよう検討してみてくださいね。
参考:コーヒーを飲むと胃もたれする?コーヒーのメリット・デメリット