低温やけどは、長時間低い温度で皮膚が熱せられることによって起こるものなので、気がつかないうちに重症化しやすく注意が必要です。
そして、低温やけどの一番多い症状として水ぶくれがありますが、跡を残さないためには素早い対処が必要になります。
そこで、低温やけどで水ぶくれができた場合、どのように対処するのがベストなのかを詳しく解説していこうと思いますので、最後までご覧になってください。
目次
低温やけどで水ぶくれができたら破った方がいい?
低温やけどで水ぶくれができた場合には、絶対に自分で破ってはいけません。
低温やけどで水ぶくれができているということは、皮膚の奥深くにある真皮という層にまでやけどが到達しており、真皮の毛細血管が破けて、血液の成分が漏れているという状態にあるからです。
血液はいくつかの成分にわかれており、普段赤く見えるのは、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質の色によるものですが、低温やけどで水ぶくれになった内部は、血液の成分でも透明な血漿(けっしょう)が、溜まっている状態となります。
低温やけどに特に注意が必要な理由は、見た目だけではやけどの深さが分からないからです。
どういうことかというと、水ぶくれになっている患部の奥は確実にやけどでダメージを受けているのですが、水ぶくれ越しにはどこまで進行しているのかわかりませんから、見た目がたいした事ないからと症状を甘く見てはいけません。
もし、通常のやけどであれば、熱いものがかかった時に強く痛みを感じるので、人は反射的に体を離しますから長時間特定の部分が熱せられ続けることはないでしょう。
しかし、低温やけどでは、あまり痛みを感じないので、長い時間をかけて皮膚の細胞が破壊されていき、真皮にまで到達してしまうのです。
それほど高くない温度に長時間触れることによって生じる熱傷を「低温熱傷(ていおんやけど)」といいます。低温といっても、人間の体温以下の温度で熱傷に なることはありません。この場合の「低温」とは「高温」に対する用語として使用されており、「やや熱い」と感じる程度です。
簡単にいうと、ステーキのレア状態が、低温やけどの本質です。低温で徐々に内部まで加熱されて、表面の皮膚だけでなく、皮下の脂肪組織や血管など、蛋白質でできた物を変性させるのが、低温やけどです。
血管が破壊されているのでやけどした当日はたいした傷に見えなくても、血流がないので時間がたつと徐々に損傷が深くなっていきます。
引用元:高崎市棟高町のあすなろクリニック
水ぶくれを破ってはいけないわけ
水ぶくれを破くということは、やけどした部分を何のバリアもない状態で外に露出させるという行為なので、当然、ウイルスや雑菌が患部からさらに奥に侵入する危険があります。
皮膚の奥にある真皮は、表面の表皮と違い、自然と生まれ変わることがないので、やけどによる炎症が悪化すると跡が残ってしまう可能性が高く、きれいに治したいのなら水ぶくれを破ってはいけません。
そして、水ぶくれが痛む原因には主に2つの理由が考えられます。
- 水ぶくれの奥のやけどが痛む
- 水ぶくれが膨らんで患部が圧迫されて痛む
注意が必要なのは、水ぶくれが大きく膨れ上がり、少し体を動かすだけでも皮膚が引っ張られて患部を圧迫している場合です。
もちろん、自分で潰すのは厳禁ですが、そこまで大きくなると自然に潰れてしまう可能性が高いので、できるだけ早く病院に行くことが望ましいでしょう。
水ぶくれが大きくなっているということは、皮膚のやけどがより深くまで到達していることが考えられ、病院で適切な処置をしなければ跡が残るばかりか、ウイルスや細菌により感染症を引き起こす可能性もあります。
水ぶくれが大きい場合には、患部を水で冷やしてから、外部となるべく触れないようにし、速やかにお医者さんの診察を受けることが、症状の悪化を防ぐことにつながるのです。
低温やけどで水ぶくれができるまで気が付かないわけ
低温やけどで、あまり痛みを感じないのは、熱が皮膚表面ではなく、その奥にある脂肪細胞に伝わって皮膚の破壊が進むためです。
脂肪細胞は文字通り脂肪を蓄えておく細胞であり痛みを感じにくいので、症状が進行してから痛みが発生することになります。
実は人間の皮膚は非常にうすく、特に日本人は表皮と真皮を合わせても、約3mm強の厚さしかありません。(表皮は0.1から0.3ミリです)
日本人の表皮の厚さは、0.1~0.3ミリ。表皮の下の真皮の厚さは、1ミリ~3ミリです。
引用元:サキナビューティーラウンジ福岡
ストーブや湯たんぽで長時間特定の部分を熱すると、熱が皮膚を超えて脂肪細胞にまで伝わるため、皮膚の細胞に深刻なダメージを与えてしまうのです。
低温やけどは真皮まで到達する
皮膚の細胞は、大きく分けて表皮と真皮に分かれます。表皮と真皮の違いは、自然に生まれ変わるのかどうかということです。
人間の皮膚の表面にある表皮はターンオーバーといって、約28日で全て新しい細胞に変わりますので、ダメージを受けても跡が残ることはありません。
しかし、奥にある真皮は、ターンオーバーがないので、一度傷ついてしまうと跡が残ってしまうのです。
これが、低温やけどが恐ろしいと言われる由縁でもあります。
要するに、通常のやけどでは皮膚の表面部分(表皮)に達した時点で気づくことができますが、低温やけどの場合には、気がついた時にはすでに皮膚の深い部分(真皮)にまで達しているのです。
また、低温やけどは寒い冬の時期に多発しますが、寒いと全身の感覚が鈍くなってしまうのでより気をつけなければいけないということも覚えておきましょう。
気温が下がると人間は生命維持に必要な臓器である、心臓や脳に優先的に血液を送るので、皮膚への血液の供給は後回しになってしまうのですが、血行が悪くなると感覚が鈍くなり、痛みなどを感じにくくなります。
人間が皮膚から痛みなどの感覚を受け取るメカニズムというのは少し複雑で、ケガなどで皮膚に異常が起こるとセロトニンなどの”発痛物質”というものが発生し、それが、やがて電気信号に変換され、脳に送られた段階で初めて痛みを認識できるのです。
寒いと全身の血管は脳や心臓などを守るために収縮するので、発痛物質が脳に伝わりにくくなり、結果、痛みに鈍感になるのです。
低温やけどで水ぶくれになってしまった場合の処置
低温やけどで水ぶくれになってしまった場合には、適切な処置を素早くすることが必要です。
低温やけどの場合は、水ぶくれの奥の皮膚がやけどをしており、直接冷やすことができないので、自然と腫れが引くのを待つしかありませんが、まず、水ぶくれになった部分を冷やす(患部を洗う)ことで皮膚表面の炎症を防ぎ、患部を清潔に保つことに努めましょう。
しかし、水ぶくれになった部分の皮膚は非常に薄くなっており、はがれやすいので急激に冷やすのはNGです。
また、あまりにも冷たすぎる氷やアイスノンなどを当ててしまうと、そのまま皮膚が張り付いて破けてしまう可能性があるので気をつけましょう。
正しい水ぶくれの処置では、弱い水流の水で軽く冷やすか、お風呂場の洗い桶などに水を溜めて静かに患部を沈めて少しの間冷やします。(冷やすのには”やけどの原因が低温やけどか普通のやけどかは素人では判断が難しい”ので、普通のやけどの可能性も考慮してのことです)
そして、自己診断は危険なので、一刻も早く病院でお医者さんの診察を受けて下さい。
面倒だと思われるかもしれませんが、低温やけどになる理由の多くには、寒さによる感覚の麻痺があるので、見た目よりも深刻だと考え、必ず診察を受けましょう。
水ぶくれが潰れてしまった場合の対処
そして、万が一水ぶくれが潰れてしまった場合には、バイ菌が入らないように清潔なガーゼなどで患部を覆って、そのままの状態で病院へ行き、医師の診察を受けて下さい。
この際、重要なのは間違っても軟膏(なんこう)などを消毒のために塗らないことです。
低温やけどは、患部は真皮またはもっと深い部分となりますので、その部分に異物を塗ることは、ケガで切れた傷口の内部に軟膏を塗りこむようなもので逆効果としかなりません。
低温やけどで水ぶくれができている状態というのは、見た目よりも非常に深刻な状況なので、応急処置をしたらすぐにお医者さんに診てもらうことが大切です。
参考:やけどの辛さを止めてくれる最適な痛み止めは塗り薬?飲み薬?
まとめ
低温やけどは皮膚の深い部分のやけどあり、見た目よりも深刻な状態となっているため、一刻も早くお医者さんの診察を受けることが必要となります。
もし、水ぶくれができている場合には、絶対に自分で潰すことはせず、冷やすのも水で洗う程度に留め、潰れないうちにお医者さんに診てもらいましょう。