切り傷ができてから、傷口が腫れたり、激しく痛んだり、傷口が熱を持ったりします。この状態は細菌に感染している事を意味する炎症の症状です。
この後、傷口に膿がでてくると「化膿」と言います。ここまで症状が進行した場合の正しい処置は何でしょうか?詳しく解説していきます。
切り傷からくる腫れ、痛み、熱は細菌感染症?
細菌感染による炎症を医療用語で言うと、「疼痛」「腫脹」「発赤」「局所熱感」となり、このうちひとつでも症状がでると、感染していると考えます。これは、侵入してきた細菌に対し、体内の細胞が戦っているためにこのような症状がでます。
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感染する細菌はブドウ球菌や連鎖球菌がほとんどで、空気中に常にいるため、感染しやすいのです。
また緑膿菌などの常在菌はその名の通り、常にそこに在る菌と言う事で、体内にもいるのです。なぜいつもは感染しないのでしょう。それは、常在菌は平素無害菌と言って、健康な状態ならまったく悪さをしない菌達なのです。
緑膿菌に感染してしまうと、緑がかった膿が出ます。また、痰も同じものです。ケガをした時には傷だけではなく、日常生活からの影響で化膿を起こしてしまうことがあるのです。
睡眠不足やストレス状態で免疫力が弱っていると、平素無害菌の悪さを許してしまうのです。抗生物質の服用で治りますが、この菌は抗生物質への耐性があり、日頃から抗生物質を飲んでいる人には効かないことがありますので注意が必要です。
高齢者は死にいたることもあるので、あまく見てはいけません。
腫れ、痛み、熱をもつ細菌感染症になったのはなぜ?傷を乾燥させたから?
切り傷の治療を行う時、どのような方法をとるかで、痛みや治り方などの経過と結果が変わります。まず、傷を負ったときに、消毒薬をかけたり、汚れたまま泡タイプの薬を吹き付けて絆創膏を貼ってしまったりしたら、「化膿してください」と言っているようなものなのです。
消毒液は切り傷の奥深くまでは浸透しません。細菌を全滅させることは出来ないのです。細菌を倒すのは、消毒薬ではなく、自分の体液なのです。体内には自己自然治癒力が備わっています。ケガをしたとたん、それらは真っ先に傷口に向かってきます。
その体液は浸出液と言い、中には止血細胞、皮膚再生細胞、細胞を攻撃する白血球などがたくさん入っているのです。消毒薬は、細菌ではなく、ケガを治すために集まった浸出液の中の細胞を迎え撃って死滅させてしまうのです。
体内からの治癒力は死んでしまい、消毒の届かないところにいた細菌たちは、大喜びで増殖を始めます。そして化膿するのです。
汚れたままの傷口に泡を吹き付けたなら、細菌の温床にフタをしたことになります。浸出液は出てきますが、泡タイプの傷薬は傷口を覆い乾燥させるように作られていますので、出口がありません。
細菌と戦って任務を終えた優秀な細胞たちは死骸となって泡の内側にウジャウジャと溜ってしまいます。するとそこは一変して、細菌の大喜びする増殖場となってしまうのです。そしてそのまま化膿します。
最初から間違えてしまうと、治るための進行がすべて遅くなります。早く治すためには、化膿なんてさせたくありませんね。では、どうするのか。まず絶対にしなくてはならないのが傷口の洗浄です。
これは水道水を使って洗い流すと言う事です。切り傷の場合は奥まで見えませんが、傷口はきれいに洗いましょう。次にするのは止血です。この時はすでに、体内では浸出液が傷口に到着し、中からも止血を始めています。中と外から止血しましょう。キッチンペーパーの上から傷口を圧迫します。
5分くらいすると、ほとんどの傷は止まっています。まだ出るようなら、もう一度5分くらい圧迫しましょう。この時、傷が指先だとキッチンペーパーを輪ゴムでグルグル巻きにする人がいますが、それは止血ではなく、うっ血です。長時間そのままにしていると、指が壊死しますので、やってはいけません。
続いて、ある程度血が止まったら、ワセリンを傷口に置きます。体温で溶けますので、無理にたくさん塗り付けなくても大丈夫です。その上から、ラップを巻きます。くるりと一周でOKです。
もう一つの治療法は、キズパワーパッドなどのハイドロコロイド絆創膏を使うことです。傷口に直接貼ります。この場合はワセリンはつけなくても大丈夫です。
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この絆創膏は、余分な浸出液を吸収して、新しい浸出液をゲル状にし、傷口に潤いを保たせるように出来ています。浸出液があまりでないほどの小さな傷には向きません。
このように、浸出液の力で治療してもらうために、傷口は潤っている状態じゃないとならないのです。
細菌感染症がおきてしまったら、どう処置をすればいいの?
細菌による炎症が起きてしまったら、抗生物質で退治することになります。市販薬もありますが、感染症は命を奪うものもあります。用心して病院に行きましょう。
まとめ
傷口を浸出液で満たす治療法でも、こまめな交換をしなかったり、不衛生にしていたら、そこは細菌の温床となります。もしも細菌が入り込んだら、濡れている患部は細菌の大好物なのです。せっかく化膿しない治療法にしても、こうなっては本末転倒です。
そして、細菌感染したら病院で先生に診てもらいましょう。感染症は体調次第で大変怖いことになります。自分で思うより、体の奥で感染していることもあるのです。適切な処置をしてもらいましょう。