立ち上がった時に、クラ〜ッとすると、「貧血かも!」とよく言いますよね。この時言っている「貧血」って 「脳貧血」とも言われますが
本当は「起立性低血圧」と言う病気で、医学的には「貧血」とは呼ばないものなんです。詳しく解説していきますね。
立ちくらみが起きる脳貧血って貧血とは違う?
立ちくらみとは、お風呂で湯船から出ようと立ち上がった時に、クラッとしたりするものです。多くの人が経験されているのではないでしょうか。朝、ベットから起き上がる時にも、しゃがんで靴を履いて立ち上がった時などにも起こりやすいですね。
でも立ち上がった時、毎回なるわけではなさそうです。これはどういうことでしょうか。この立ち上がった時に「立ちくらみ」を起こしているのは、「脳貧血」と呼ばれる、「起立性低血圧」と言う状態です。
クラッとしても、数秒ジッとしていると特に何事もなく普段通りの生活に戻れることがほとんどなのですが、頻繁に立ちくらみを起こしたり、状態が悪いと様々な症状が出てきます。
起立性低血圧の症状→立ちくらみ・冷や汗・顔面蒼白・吐き気・頭痛・意識喪失など)起立性低血圧は、ほとんどが一過性のものですが、症状がひどい時は、意識を失うことがあるので、転んで頭を打ったり、骨折をしたりと二次的なケガが怖いのです。
- 起立性低血圧の原因→自律神経が正常に機能しなくなったために起こる血圧の急降下・一気に20mmHg以上の降下がある時のことを指す。
- 起立性低血圧になりやすい人→ストレスを抱えている人・睡眠不足を起こしている人。
起立性低血圧の原因は自律神経が正常に機能しなくなったためです。自律神経は、ストレス状態が続いたり、睡眠不足が続くことで、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、異常を起こしています。
このような、起立性低血圧と混同されやすいのが、「貧血」です。この場合の「貧血」とは「鉄欠乏性貧血」のことを言います。これは、鉄分不足により、赤血球の中のヘモグロビン量が、減り、全身に十分な酸素が運ばれなくて起こる病気です。
血液量も減るため、末梢血管などには、血液がなかなか廻らず、冷えや、むくみ、顔面蒼白、しびれ、疲労感、倦怠感などの症状が出てきます。また、血液の絶対量が少ないため、食事の時に胃腸の周りに血液が集まってしまったり、女性が生理の時に、腹部に血液が集まってしまうと、脳への血流不足を起こし、起立性低血圧を併発することがあります。
低血圧と貧血は、原因は大きく違いますが、同じように「血流不足」として体に影響を及ぼすため、混同されやすいのでしょう。
低血圧と貧血!どちらも治療は必要?
低血圧には、上記のように、誰にでも起きる可能性がある起立性低血圧と、生まれつきや遺伝、体質からなる本態性低血圧があります。
この本態性低血圧は、血圧を測定したときに、最大値が100mmHg以下の人を指しますが、低血圧特有の不快症状が出ていなければ、治療の必要はありません。
低血圧には不快症状が現れやすく、「朝起きれない」「午前中はボーっとしている」「頭痛」「立くらみ」などが起きると、低血圧症と言われ、それら不快症状を抑える治療をすることになりますが、多くは食事療法と生活習慣の見直しによるものです。
また、本態性低血圧は10代〜20代の若い女性に多く、年齢を重ねるごとに血圧も不快症状も改善され、やがて高齢になると、高血圧へと変化して行く事が多いのです。中には生活習慣や食生活に問題がなく、不快症状もなく、血圧測定値だけが低血圧な人もいて、このような人の方が正常血圧より健康だと言われています。
貧血はどうでしょう。こちらも若い女性に多いと言われる病気です。女性は、生涯を通して鉄分を消費することが多いため、常に鉄分不足に陥りやすいのです。毎月の月経や妊娠、出産、また小食、偏食、無理なダイエットにより、鉄分が不足し、「鉄欠乏性貧血」になります。
こちらは、低血圧とは違い、治療しなければなりません。特に妊娠と大きく関わることがあり、不妊、胎児の成長の妨げ、流産、死産のリスクが高くなります。また、低体重児の出産と母体の貧血も大きな関係があります。
貧血の治療は、鉄剤の投薬治療、または注射による治療があります。鉄剤は副作用が大きく、胃に負担がかかり、大変飲みにくい薬のため、途中で投げ出してしまう人もたくさんいます。薬が合わない時は、止めてしまわずに医師に相談し、他の薬にしてもらったり、注射にしてもらい、確実に治療してしまわなければなりません。
どちらも、血流不足をおこすため、クラっとする立ちくらみを起こしますが、その原因が何なのか、確認する事は大切です。低血圧は、自分で測定できるため、わかりやすいですが、貧血は血液検査をしなければわかりませんね。そこで、普段の生活の中で、鉄分が摂取できているか、セルフチェックをしてみましょう。
鉄分不足セルフチェック(20項目)
- 朝食はとらないことが多い
- 朝はパンとコーヒーだけ
- 昼食を抜くことが多い
- 昼食はコンビニ物だけで済ます事が多い
- 夕食をきちんと食べない事が多い
- 外食が多い
- 食事の回数や時間が毎日バラバラだ
- 丼ものや麺類など、炭水化物が好き
- 早食いとよく言われる
- ダイエット中のため、食事の量を減らしている
- 野菜はあまり食べない、嫌いな野菜が多い
- ワカメなどの海藻はめったに食べない
- 生の果物はあまり食べない
- 青魚(サバ、アジ、イワシ)などは嫌い
- アサリ、しじみ、カキなど貝類は嫌い
- ダイエットのために肉類は控えている
- お酒を飲む時は、あまりおつまみを食べない
- 梅干、レモンなどすっぱいものが苦手
- 納豆や豆腐などの大豆食品はあまり食べない
- 冷凍食品やレトルト食品をよく使う
上記のうち、8個以上当てはまるようなら、鉄分が不足している生活です。食生活の見直しや、サプリメントで の補充が必要です。
ただし、サプリメントで鉄分だけを補充しても、ビタミンやタンパク質が不足していたら、 鉄分は吸収できませんので、きちんとした食生活をした上で、上手にサプリメントを使いましょう。
起立性低血圧を併発しやすい鉄欠乏性貧血とは!
似たような症状がでるため、混同されやすい低血圧と貧血ですが、原因がまったく違うため、治療も全然違うものです。まずは、自分の状態を把握することから始めなくてはなりません。
ただし、「鉄欠乏性貧血」を起こしている人が「起立性低血圧」を起こすパターンがあります。一番その状態になりやすいのが、妊婦さんです。実に妊婦さんの40%が鉄欠乏性貧血を起こしていると言われ、母体を治療しながら妊娠期を送ります。
妊婦さんは、胎児の栄養補給のために、お腹の周りに血液が集まっているため、常に脳が血流不足ぎみと言えます。よく、妊婦は眠いと言いますね、脳に血液が十分に回らなくなっているため、仕方がないのです。この状態では、起立性低血圧を起こさなくても、立ちくらみは良く起きてしまい、注意が必要です。
まとめ
立ちくらみを起こすのは「脳貧血」と言われる「起立性低血圧」です。よく「貧血」と呼ばれているものは、「鉄欠乏性貧血」です。同じように立ちくらみの症状を起こしますが、原因も治療もまったく違うものなので、自分に何が起こっているのかを把握しなければなりません。
起立性低血圧が1〜2回起こったくらいでは、とくに問題はありませんが、何度も続いたり、悪化していくようなら、自律神経を安定させるための治療を受けなくてはいけません。放置してしまうと、何度も意識喪失を繰り返すようになってしまいますよ。
鉄欠乏性貧血は鉄分を摂取することで、改善する病気です。ただし、自分に合わない薬や、治療にかかる時間が長くなる場合もあるので、早めに病院へ行き、一番良い方法を相談しましょう。